[公演コメント]
植物のなかでたえず揺らぎ続ける電位
の変化。その変化のなかにみいだされた「かたち」がメロディとなって生まれた「植物文様」と
いう音楽。植物の息づかいが、砂原悟の弾くクラヴィコードのフラ
ジャイルな響きとして綴られていきます。
■「植物文様シリーズ」とは、
《植物文様》という藤枝守の作曲シリーズは、植物研究家でありメディアアーティストの銅金裕司が考案した「プラントロン」という装置との出会いから生まれた。この装置から採取された植物の葉表面
の電位変化のデータに内包された音楽的な価値に着目しながら、MAXによるコンピュータ・プログラムによって、この電位
変化のデータをメロディックなパターンに読みかえるという手法が一貫して行われている。その手法は、「なにかをみいだす」という行為に集中した作曲の試みであり、また、ピタゴラス音律や純正調などのさまざまな音律によって《植物文様》というシリーズとして現在も展開している。
■クラヴィコードとは・・・
音律楽器であったモノコードに鍵盤機能がついたクラヴィコードは、17〜8世紀のヨーロッパ全土で広く愛用されたといわれている。誰かのために演奏されるのではなく、演奏の練習や作曲の手助けとして重宝がられていたという。タンジェント(金属片)が弦を突き上げるメカニズムによって、ピアノやチェンバロにはない独特の微妙な音のニュアンスが醸し出される。今回の公演で使用される楽器は、1780年代のドイツの楽器製作家フーベルトのクラヴィコードが原形として山野辺暁彦さんが製作したもので、ある同じ弦を異なる鍵盤で鳴らす共有弦タイプに属している。
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